研究課題
本研究では、様々な系統の細胞に分化誘導可能なiPS細胞に着目し、まずヒトiPS細胞に対して腫瘍特異的融合遺伝子を、発現誘導システムを用いて導入し、改変iPS細胞を作製することを目指した。そして様々な系統の異なる分化段階において融合遺伝子の発現を誘導し、その表現型及び遺伝子発現プロファイルの変化を把握し、腫瘍のプロファイルと比較することで、細胞起源と融合遺伝子との関連性について明らかすることを目的とした。平成23年度には下記の成果を得た。1.iPS細胞への発現誘導型肉腫融合遺伝子の導入導入効率を上げるためにPiggyBacトランスポゾンシステムを用いて、滑膜肉腫特異的融合遺伝子であるSYT-SSX遺伝子をiPS細胞に導入した。まずPiggyBacベクターに、Tet-ONシステムとSYT-SSX遺伝子を組み込み、次にトランスポゼース発現ベクターと同時にリポフェクションし、Neomycinによる選択によって細胞株を樹立した。その結果ドキシサイクリンの濃度依存性に融合遺伝子の発現が誘導される複数のiPS細胞株の樹立に成功した。2.iPS細胞に対するSYT-SSX融合遺伝子の影響ドキシサイクリン添加によるSYT-SSX融合遺伝子の発現誘導により、iPS細胞は多能性幹細胞関連遺伝子の発現が消失し、分化関運遺伝子の発現が誘導された。形態学的にも特有のコロニー形成能が失われ、単層培養細胞となった。すなわちSYT-SSX融合蛋白は、iPS細胞を未分化な状態に維持する分子機構を阻害する作用があることが判明した。現在引き続いて、分化誘導後の細胞に対する影響を解析している。
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Oncogene
巻: 30(38) ページ: 4015-25
DOI:10.1038/onc.2011.108
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