研究概要 |
我々は今までに心筋マイクロダイアリシス法を用いた動物実験で、揮発性吸入麻酔薬の臓器保護効果を詳細に検討してきた。その際、血液や心筋間質液を取り扱う実験を行なってきたが、それら液中の吸入麻酔薬濃度が実測できれば、吸入麻酔薬濃度と心筋逸脱酵素や蛋白質濃度との関係を直接解析できるのではと考えた。従来の方法ではガスクロマトグラフを用いた揮発性麻酔薬濃度測定は、水溶性ガスをヘプタンなどの溶媒に移行させた後に測定する必要があるため、その取扱が煩雑で時間がかかる上に正確さにも問題がある。また、測定にはまとまったサンプル量を必要とし、心筋間質液での計測は事実上不可能である。今回は干渉増幅反射法という工業用に開発された揮発性物質測定装置が簡便で正確に水溶液中の揮発性物質を測定できることに着目し、その装置の改良により簡便にベッドサイドで揮発性吸入麻酔薬を測定出来るキットを開発することを目的とする。そのため初年度である本年は、まず既知のセボフルラン濃度溶液(10ppm,100ppm,500ppm)について、VOCセンサーを用いて測定し、定量的測定が可能かどうかについて、その相関性を確認した。次に、ラットを用いて、人工呼吸下にセボフルランを投与した際の血中セボフルラン濃度をVOCセンサーにより測定可能であることを確かめた。さらに、その濃度が呼吸回路内のセボフルラン濃度と相関していることもを確認できた。現在は血液サンプルの最小必要量を算出する目的で、検出感度を検証し、少量サンプル(200μl以下)で可能なキットの開発の基盤となるよう研究を進めている。最終的には取り扱いの難しい揮発性麻酔薬を簡血液や臓器間質液で簡便に測定出来るように開発をすすめているところである。
|