最終年にあたる本年は、ラットをネンブタール麻酔下に気管切開と人工呼吸を施行し、吸入麻酔薬のセボフルランおよびイソフルラン、デスフルランを気化器にて投与し、血液中の麻酔薬濃度をハンディVOCセンサー(干渉増幅反射法)にて測定した。また測定の精度、サンプル量の問題・煩雑さなど臨床使用上の各種問題点を洗い出し、試作器の実用に向けた情報を収集した。必要サンプルボリュームの少量化の工夫・ヘッドスペースの適正サイズの決定・ヘッドスペース灌流量の調整と測定環境温度による感度増幅について検証し、最終的には1mlの血液で吸入麻酔薬(セボフルラン、イソフルラン、デスフルラン)の測定が可能となった。実際に血液中の吸入麻酔薬濃度を少量のサンプルで3 分以内に測定できるようにすることを目標としていたが、それはおおよそ達成できたと考える。ただし、低濃度の場合は血液採取時の取り扱いによってデータが不安定になる傾向があるために、工夫が必要であることもわかった。今後はこのデータをもとにベッドサイドで測定が可能なキットの開発ができるように検討を続ける予定である。 またプロポフォール濃度測定についても測定を試みた。本機器はベンゼン環をもつ薬物すべてを検出できることから、血中および呼気中のプロポフォール濃度もモニターできると考えた。まずはin vitroにてプロポフォールがハンディVOCセンサーで検出可能であることを確認した。次にプロポフォールをラットに投与して、血液サンプルよりその濃度を測定したところ、感度以下で測定できなかった。 現在はこれらの結果を取りまとめ、成果の発表の準備をしているところである。
|