研究概要 |
麻酔科領域でプレコンディショニング(ischemic preconditioning, IPC)という現象が注目を集めている。Murrayらによる最初の報告は心臓で短時間の冠動脈の閉塞・再潅流を繰り返すと心筋梗塞巣が縮小するというものであった。現在では、心臓の他に脳、肝臓などの臓器でも確認されている現象である。申請者らの提案は、プレコンディショニングを補う新規の臓器保護戦略である誘導性代謝リプログラミング法(induced metabolic reprogramming, iMRing)の確立,遺伝学的な背景の理解に向けた基礎研究を細胞、臓器でおこなう事である。 この目的を達成するために研究計画に従って実験を進めて今年度は以下の研究成果を得た。 #1肝臓由来初代培養系の確立と分子生物学的な解析法の適応 マウス肝臓から肝細胞の初代培養系を確立した。 細胞を用いた虚血・再灌流モデルを樹立した。 低酸素含む様々な環境,物質に細胞を暴露し,虚血・再灌流障害の発生に与える影響を遺伝子応答,特に転写因子低酸素誘導性因子1(hypoxia-inducible factor 1, HIF-1)を介した遺伝子応答に力点を置いて解析した。 一連の解析によりHIF-1の人為的な活性化が少なくとも細胞を用いたモデル系においてミトコンドリアに依存した代謝経路から解糖系優位な代謝経路への変換が起こり(代謝リプログラミング),虚血・再灌流障害を軽減する可能性を示唆する知見を得た。
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