研究課題
ピロリ菌による慢性胃炎と胃癌発症が遺伝子変異誘導酵素AIDの異所性発現で関連付けられる可能性が示唆されたことを受け、我々は前立腺においても同様の機序を考え、Propionibacterium acnesの細胞内感染に起因した慢性炎症と発癌との関連について検討を進めてきた。In vitro環境下においてP.acnesを感染させた前立腺癌由来の細胞株および前立腺癌の凍結材料を用いてreal-time PCRによりAIDのmRNA量を定量したが、感染細胞、前立腺癌組織ともに発現は低値であった。前立腺癌組織においてAID発現の局在を確認する目的でパラフィン包埋切片でも有効なモノクローナル抗体の作製を試みたが、作製し得た抗体はwestern blotなど生材料には使用可能であったが、パラフィン包埋切片に対する免疫染色には使用できなかった。AIDの関与が否定的であったことから、本年度は前立腺癌組織におけるNF-κBとSTAT3についての検討を行った。前立腺癌、前立腺肥大症、泌尿器悪性腫瘍にて合併切除された腫瘍病変のない前立腺組織を使用し、転写因子の活性状態とP.acnesの局在および感染量を免疫二重染色およびreal-time PCRによって検討し、癌化との関連性について検証した。その結果、前立腺癌組織と非腫瘍組織ではほとんどの腺管でP.acnesの存在を認めた。感染量も肥大症に比べ、前立腺癌、非腫瘍組織は有意に多かった。NF-κBとSTAT3陽性腺管は、前立腺癌組織に有意に多く認められた。前立腺癌症例において腺管単位で検討したところ、P.acnesの有無と各転写因子の活性化にそれぞれ高い相関を認めた。前立腺癌組織と非腫瘍組織との間にP.acnes感染量の差はなかったものの、癌の好発部位と本菌の局在が一致しているため、P.acnesの感染と癌化には何らかの関与があるものと考える。
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