研究課題
miRNAは、その発現がヒトの様々な疾患の発症に関与することが分かってきており、急速にその研究が進んでいる。miRNAはあらたな遺伝子発現調節分子として、癌研究領域では、発癌、増殖、浸潤、転移などのさまざまな過程でその関与が注目されている。前立腺癌におけるmiRNAの発現異常の研究に関する報告は急速に増えてきており、その発現異常をターゲットにした診断や治療の開発が期待されている。採取した全尿を遠心して得られたペレットから抽出したmiPNAに関する尿路性器癌に関する診断マーカーの報告はあるが、尿上清中特異的なmiRNAの報告は確固たるものがなく、本研究ではまず全尿(上清およびペレット)からmiRNAを採取して、その解析をすすめた。全尿中面miRNA array前立腺癌患者10名および前立腺肥大症7名の全尿中のmiRNAを抽出し、miRNA array(東レHuman miRNA Oligo chip)を用いた網羅的発現解析を施行した。現在までに有用な知見は得られておらず、なおも詳細に解析中であり、結果が出たらそのvalidationも行う。尿上清中miRNAの検出尿上清中miRNA採取時に細胞成分除去するためにさまざまなフィルターを用いてmiRNAの抽出を試みている。また尿の保存状況(室温での保存時間)によって採取できるmiRNAの量に関しては、数時間程度なら変化しないことを示唆する結果が得られている。そこでサンプル量を5~10mlに増やして十分量のsmall RNAを安定して抽出できるよう、抽出法を検討する。また一般的に内因性コントロールとして用いられているRNU44,RNU48,RNU16b等が尿上清からも安定して検出できるかも検討する予定である。前立腺癌細胞株培養上清中miRNAの網羅的解析代表的な前立腺癌細胞株LNCaPおよびPC3の上清中miRNAを採取して、細胞分泌miRNAを探索する目的で、その網羅的発現解析の準備を施行している。培養細胞上清からもinternal controlであるRNU6bが安定して検出できることがわかっており、現在その発現量と培養細胞での発現量との相関を調べている。いくつかの既知のmiRNAについて、培養細胞とその上清での発現量を比較し、相関の有無を検討している。網羅的解析についても今後行う予定である。本研究においては尿上清からのmiRNA抽出にあたり、検体により得られる収量のばらつきが大きいこと、尿中miRNAの発現量を比較するときのcontrolが決定できていないことが期間内に十分な結果に至れなかった理由と考えている。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Cancer Sci
巻: 102 ページ: 828-36
doi:10.1111/j.1349-7006.2011.01876.x
http://www.urology.kuhp.kyoto-u.ac.jp/