腎の位置・形態異常に関する研究について、昨年度までに引き続き、bromo-deoxyuridineにより細胞を標識して追跡し、尿管上皮細胞の再配置および移動と、昨年度観察した細胞周期に同期したinterkinetic nuclear migration (INM)との関係について詳細に解析した。その結果、尿管の伸長には、胎生11日から12日にかけて収斂伸長(convergent extension)機構が関わることを確認したが、それに加えて幹細胞増殖機構であるINMによる細胞数の増加および細胞の尿管中央部から近位・遠位端への移動が関わる可能性が示唆された。一方、多次元尺度法を用いた解析により上皮の核移動の周期性を確認中だが、細胞の移動が加わるなど条件が複雑なため最終確認に至っていない。これらの所見は、尿管上皮におけるINMおよび細胞の再配置が神経上皮や腸管上皮とは異なる機構により起こることを示唆する。 また子宮外発生法により形態形成に関わる調節因子をマウス胎児腎臓・尿管周囲に注入し、腎臓の位置・形態変化およびネフロン数における効果を検証する実験を継続しているが、これまで一定の結果が得られなかった。その一因として、注入部位をコントロールすることが困難であったことが考えられた。そこで正確な注入により安定した結果を得るため、超音波ガイド下で注入するシステムを導入して、これまでにほぼ手技・条件を確立した。今後この系により詳細な注入実験を行い、腎臓の位置・形態およびネフロン数の増減に対する効果について明確な結論を得る予定であり、これが確立すれば治療法としての同法の有用性が高まるものと考えられる。
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