初年度である平成22年度は胎児心電図装置によるモニタリングの下で胎仔に虚血再灌流の負荷による胎児脳出血モデルマウスを作成する。その過程でナノバブルを経胎盤的に胎仔脳へ導入し、胎仔脳血流を計測する技術を確立することを目標として実験を実施した。 1.ナノバブルの作成と胎仔脳への導入 100nmの超音波エコーガスのバブルを封入した脂質二重膜(PEG-リポソーム)からなるナノバブルを作成し、超音波パルス装置による観測下で経胎盤的にマウス胎仔脳への導入を試みた。その結果、胎仔脳血流を鮮明に検出することに成功した。 2.虚血再還流障害の作成 日齢17日目に母体を開腹し子宮外からマウス胎仔に心電図電極を装着し、胎児心拍数の計測を行いながら以下の処置を実施した。胎盤へ流入する子宮動脈分枝の圧迫・解放を繰り返し、虚血再還流モデル実験を実施した。5分圧迫5分解放3回で心拍数が回復することを胎仔心電図で、脳血流の再灌流が生じることを超音波パルス装置を用いて確認する事に成功した。 3.虚血再還流と血液再配分の検証 実験中に超音波パルス装置のB-modeを用いて輝度変化を指標に胎仔中脳動脈分枝血流を計測・評価した。低栄養食群では脳血流の再灌流が心拍数の回復より遅れて生じた後、脳出血を発症することが観察された。 超音波パルス装置によるマウス胎仔脳の観察の結果、低栄養食群の胎児脳出血は2回目の再灌流時に発症する頻度が高いことが判明した。
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