研究2年目である平成23年度は正常飼育および低栄養飼育したマウスの胎仔に胎児心電図装置による循環動態の監視下で虚血再還流を負荷した。虚血再灌流負荷前後の胎仔脳を採材し(各6検体、計24検体)、母体栄養条件による遺伝子発現変動をマイクロアレイ解析によって母体栄養条件による胎仔脳の虚血再灌流に対する遺伝子発現応答を比較、評価を実施した。 ・虚血再灌流負荷前:低栄養飼育由来の胎仔脳ではHIFlaおよびその下流遺伝子の発現量が有意に増加し、低酸素状態と同様の遺伝子発現プロファイルを示した。またCOX4i1などのミトコンドリア構成遺伝子群のmRNA発現量や成人で脳出血との関連が報告されているs100a10のmRNA発現量と転写因子p53のmRNA発現量の関係を精査したところ、虚血再灌流前はこれらの遺伝子群のmRNA発現量とp53mRNA発現量の分布は母体栄養条件による際を認めなかった ・虚血再灌流負荷後:低栄養飼育由来の胎仔脳ではミトコンドリア構成遺伝子群のmRNA発現量やs100a10のmRNA発現量が有意に増加していた。またp53mRNA発現量との関係は母体栄養条件によって明確に異なる分布を示した。脳出血発症時にミトコンドリアは活性酸素を産生することが知られていることから虚血再灌流負荷後に有意に発現が増加するCOX4i1などのミトコンドリア構成遺伝子群およびp53が脳出血の発症に関与していると考えられた。
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