研究課題/領域番号 |
22659297
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
齋藤 滋 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(医学), 教授 (30175351)
|
研究分担者 |
仁井見 英樹 富山大学, 大学病院, 助教 (50401865)
北島 勲 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(医学), 教授 (50214797)
|
キーワード | 羊水 / 絨毛膜羊膜炎 / 早産 / 病原微生物 / 迅速診断法 / Universal PCR / 16SrRNA |
研究概要 |
細菌由来16SrRNAの共通配列部にプライマーを設定し、PCRを施行すると、すべての病原体を検出できる。しかしリコンビナントTaq DNA polymerase中にはE. Coli抽来のDNAが混入しているため、偽陽性バンドが生じてしまう。我々が独自に樹立した酵母由来Taq DNA polymeraseを用いた新たなPCR法を用いると上記の問題点が解決した。次に、切迫流・早産で入院した患者ならびに帝王切開時に無菌的に羊水を採取し、PCR法と通常の細菌培養法を行い比較した。後期流産4例、切迫早産37例(うち22例が早産、15例が正期産に至る)、正期産帝王切開例49例でPCR法を行ったところ、後期流産4例でUreaplasma1 例、Mycoplasma 1例、一般細菌1例、早産例22例中Ureaplazma 5例、Mycoplasma 1例、一般細菌5例と高率に病原体が認められ、培養検査と一致した。切迫早産治療後の正期産例15例ではUreaplasma 1例、一般細菌1例のみであり、正期産49例中Ureaplasma 2例、Mycoplasma 1例であった。PCR法は平均5時間で結果が得られ、一般細菌培養では平均6日で結果が得られた。PCR法でUreaplasma陽性であった例では3度の絨毛膜羊膜演(CAM)が43%、羊水中IL-8値が108.9ng/ml、Mycoplasma陽性では3度のCAM 50%、羊水中IL-8値が90.5ng/ml、一般細菌陽性例では3度のCAM43%、羊水中IL-8値58.8ng/mlと、PCR陰性例での3度CAM 12%、羊水中IL-8(9.2ng/ml)に比し有意に高値であった。 以上、ベッドサイドでUniversal PCR法を利用することは臨床的に有用であったので、今後は迅速な菌種の同定と抗菌薬使用により、早産が治療できるかを検討していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
順調に症例が集積してきており、羊水からのDNA抽出、PCR法等の検査手技も熟練し、約5時間後に検査結果が出るシステムを臨床検査部で確立した。母体搬送例でも午前9時~午後5時であれば当日に結果が判明する。またPCR法では一般細菌培養と同様の結果が得られていることも実証できた。検査系の確立後、スムースに臨床検体を用いた前向き試験を行っているが、順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、臨床検体を集積する以外に、PCR陽性例をdirect sequenceするか、Tm値の差を利用した系で菌種を同定するシステムを確立することを本年度の目標とする。すでに100種以上の細菌のストックはあるため、7ヶ所のPCR産物のTm値のパターン認識から菌種を同定できるシステムを今年中に確立する。液体培地で2~4時間培養時に各種抗菌薬を添加し、我々の開発したユニバーサルプライマーを用いた定量的PCRを行うと、薬剤感受性試験を短時間に行うことができるので、この系を確立する。またこの系を用いた科学的エビデンスに基づく抗菌薬使用が早産管理に有効か否かを検討する。
|