研究概要 |
1) 卵巣癌の原発巣と化学療法後の標本を比較して、CD8,CD4,FOXP3,COX1,COX2,TGFB1の免疫組織染色を施行した。CD8,CD4陽性T細胞の腫瘍組織内への浸潤は、化学療法後に増加し、卵巣癌の化学療法による抗腫瘍効果には、抗腫瘍免疫が関連していることが明らかとなった。 2) 化学療法耐性の卵巣明細胞腺癌に高発現しているHNF1βが、癌細胞における糖取り込みに関わる分子GLUT1の発現に関与し、糖取り込みを亢進させることが明らかとなった。このことは、化学療法耐性には糖代謝異常、そして酸化ストレス耐性が関与している可能性を示している。 3) シンガポール大学との共同研究で、当教室に保管してある卵巣癌90サンプルの発現マイクロアレイとSNPアレイを施行した。卵巣癌の組織型を特徴づけるDNAコピー数の異常を明らかにした。この結果により、発癌の原因となりうるDNA異常が明らかとなった。 4) ゲノムワイドな遺伝子発現解析に基づいて、TGFβ経路のメチル化はシスプラチン感受性と相関していることを明らかにした。 5) ゲノムワイドな遺伝子発現解析により、卵巣漿液性腺癌のsubtypeを5パターンに分類し、それによって化学療法感受性が規定されることを明らかにした。 6) 化学療法耐性の明細胞腺癌において、増殖を反映するE2F活性が低く、MAPK活性が高いことを明らかにし、マルチキナーゼ阻害剤の有効性を明らかにした。
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