上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition(EMT))は、細胞同士が接着し一定の極性を持って配列している上皮細胞が、細胞接着性から解放され運動性を獲得した間葉細胞に移行する現象であり、個体の発生の際に見られる現象である。このEMTが癌の浸潤・転移機構に大きく関与していることが明らかになってきた。そこで本研究は浸潤や転移を起こしやすい小児固形腫瘍においてこのEMTがどのように関与しているか研究し、小児固形腫瘍における浸潤・転移のメカニズムを解明し、将来的に浸潤・転移を抑制する新たな治療法の開発を目指すことを目的として小児固形腫瘍におけるEMT関連マーカーについて細胞株や臨床検体を用いて実験を行った。 小児固形腫瘍の臨床検体からRNAを抽出し、EMTマーカーの発現について定量RT-PCRを用いて定量的に解析している。これまでに、横紋筋肉腫の1例で初発時と再発腫瘍においての比較でEMTマーカーの変化がみられており、EMTがこの腫瘍の再発進展に関与している可能性が示唆された。今後、検体数を増やして、小児固形腫瘍におけるEMTの意義について研究を続けていく予定である。
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