研究課題
微小血管吻合の技術は主に組織移植や臓器移植の際の組織の栄養血管を移植側の血管に吻合する際に使用される。組織、臓器の生着の可否はこの細い数ミリ程度の口径の吻合が成功するかどうかに依存するため、マイクロサージャリー分野における微小血管吻合の重要性は高く、失敗したときのリスクは極めて大きい。従来、この組織移植において最も重要な位置を占めるのにもかかわらず、手技的に難しくリスクの高い作業を、器械吻合で行い、安定化させる努力は現在に至るまで連綿と続いているものの、決定的なものはできていない。現在臨床で使用できる唯一の微小血管吻合器は金属異物の針と非吸収性プラスチックを使用するため、適応が限定的であり、手縫い縫合に替わる手段とまではなっていない。本研究では、従来の吻合器の大きな問題である金属異物を使用せず、さらには、より素早く血管をデバイスに装着させる手段として、陰圧に着目した。本研究のデバイスは陰圧を発生させ、血管壁を半自動的に吸い寄せて、短時間で吻合に適した内膜同士が翻転した状態を作り出す。デバイスは陰圧を伝えるための複雑な内部構造を有するため、正確にデジタルデータから内部構造を具現化できる光造形法で試作した。動物実験はラットの鼠径静脈で行い、吻合の評価は吻合血管に依存する皮弁の壊死の有無、血管の顕微鏡下での吻合の開存を確認することで行い、また、吻合部の血管の組織学的評価を光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡で行った。平成22年は端々吻合用のデバイスを試作し、7例中6例が開存し、原理的な成功を確認した。同実験での問題点として、デバイスを血管の上に安定して固定できなかったことである。平成23年度では、デバイスを安定して血管の上に固定するための周辺機器の開発を行った。また、陰圧の切り替えを電子制御するための機器を作製した。現在、微小血管の端側吻合にも応用するため、デバイスの試作と予備実験を行っている。
すべて 2011
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Journal of Plastic, Reconstructive & Aesthetic Surgery
巻: 64 ページ: 1187-1193
doi:10.1016/j.bjps.2011.04.008