研究課題/領域番号 |
22659322
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田原 真也 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (60207206)
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研究分担者 |
橋川 和信 神戸大学, 医学部附属病院, 特命講師 (90403237)
榊原 俊介 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (50444592)
堤 定美 日本大学, 歯学部, 教授 (00028739)
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キーワード | 人工血管 / ポリビニルアルコール / 再生医療 |
研究概要 |
申請者らはこれまでに脱細胞化組織を用いた小口径人工血管の開発に成功した。また共同研究者の堤博士はポリビニルアルコール(PVA)を材料とした微小血管モデルを作成した。脱細胞化組織は生体由来物であるために感染症への配慮が必要となるため、化学合成物での開発が望まれる。一方、化学合成物では細胞の定着が不良であり、易血栓形成性・圧不耐性などの問題がある。PVAによる微小血管モデル単独では同様の問題に立ちはだかられ、実用化することができない。われわれはこれら二つの技術をコラボレートすることで、双方の利点・欠点を補完しあい、これまでにない、新しい化学合成物による小口径人工血管の開発を目指している。 昨年度に我々が行った研究において、実験動物(ラット)の腹部大動脈に1cmの欠損を作成し、PVAにより作成された口径3mmのチューブをこの部位に移植したところ、全例において閉塞が見られた。なお、脱細胞化血管においては全例、その開存が認められる事から手技上の問題はないと考えられる。本研究結果を踏まえ、また文献を併せた考察により、やはり血管内皮細胞の定着が必須であると考えた。次に内皮細胞の定着を有無を検討するために昨年度はPVAチューブと血管内皮細胞とを回転培養させ、定着の有無を検討した結果、定着しない事が明らかとなった。そこで本年度はPVAによるマテリアルの作成過程においてコラーゲンのフラグメントを埋入し(特許申請予定)細胞の定着を目指した。このコラーゲン埋入PVAとともに血管内皮細胞を回転培養したところ、内皮細胞の定着が認められた。さらに、内皮細胞には細胞膜を蛍光標識しており、一部、蛍光強度が半減していたと事から、細胞分裂も引き起こされたことが示唆された。加えて血管平滑筋細胞も同様に回転培養を行った結果、平滑筋細胞の定着も認められた。以上より、PVAを用いた生体吸収型の人工血管の開発に大きく前進した。
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