学内の倫理委員会による遺伝子解析研究の承認の後、患者からの検体(ケロイド・肥厚性瘢痕・正常瘢痕・正常皮膚)採取を開始した。 まず、切除した検体から線維芽細胞・ケラチノサイトを分離するプロトコールを確立した。そして各細胞を、様々な濃度のDNAメチル化酵素阻害薬とヒストン脱アセチル化酵素阻害薬にて処理して、各細胞の増殖曲線をそれぞれ作製することにより、各薬剤の適正処理濃度を決定した。典型症例の不足のため、平成22年度内に予定していたDNAマイクロアレイ解析はできなかった。 また各検体について、表皮・真皮の凍結保存、凍結切片用検体の保存、パラフィン標本の作製、線維芽細胞の凍結保存、ケラチノサイトの凍結保存、表皮・真皮からのDNA・RNAの抽出・保存を行って検体ライブラリを作製することにより、DNAマイクロアレイ解析の後、抽出された遺伝子についての詳細な解析が速やかにできるような体制を整えた。 さらに検体採取症例について、様々なスケールを用いた臨床症状のグレード評価を行い、それらをデータベース化することにより、研究の成果と実際の臨床症状の相関関係を評価できる体制を整えた。ケロイド・瘢痕のグレード評価と基礎研究の結果を相関させた報告は未だに存在しないため、この計画は非常に有意義なものと考えている。 平成23年度も検体採取を継続し、検体ライブラリの拡充を行うとともに、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現の網羅的解析を行う予定である。
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