研究課題/領域番号 |
22659325
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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研究分担者 |
伊関 憲 山形大学, 医学部, 准教授 (70332921)
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キーワード | 低酸素脳症 / 生体ストレス / 脂質代謝 / KOマウス / 血球細胞 |
研究概要 |
救急医療あるいは様々な外科的手術の後、生体侵襲の大きさが問題となる。その生体ストレスが病態の予後に大きな影響を与えることが少なくない。心肺蘇生患者において低酸素脳症が予後を左右する。申請者らは細胞内情報伝達機構に関する基礎研究に従事し、細胞内セカンドメッセンジャーであるジアシルグリセロール(DG)のリン酸化酵素DGキナーゼ(DGK)の分子多様性と生体臓器における遺伝子発現の多様性を明らかにしている。これまで、動物実験からラット脳の「一過性脳虚血・再還流モデル」において、DGKζ(ゼータ)が海馬ニューロンにおいて、20分間の一過性虚血後に核から細胞質へと移行し、その後アポトーシス様の細胞死に至る現象を発見した。 本研究では「一過性脳虚血・再還流モデル」の要因解析を行うために、脳スライス標本モデル実験をセットアップし解析を行った。ラット海馬スライスに酸素グルコース欠乏負荷(oxygen-glucose deprivation : OGD)を与え、ζ型DGKの細胞内局在を経時的に解析した。ζ型DGKはこれまでの虚血モデル実験と同様、海馬神経細胞においてOGD負荷20分後から徐々に核外に移行し、その後、再灌流シミュレーションとして酸素グルコースを含む通常培養条件に置換しても再び核内に局在することはなかった。ζ型DGKの核外移行は、OGD負荷10分後では認められないが、その後、通常培養条件下に置換60分後に認められることが明らかとなった。以上の実験結果より、OGD負荷10分間によりアポトーシスカスケードが作動し、ζ型DGKが核外に移行する可能性が示唆された。受容体刺激・阻害実験により、このζ型DGKの核外移行には、NMDA受容体刺激による細胞外Ca2+の細胞内流入がトリガーとなることが明らかとなった。さらに、カイニン酸てんかん動物実験モデルにおいても同様にζ型DGKの細胞質移行が誘導されることを発見し、この現象が広く、神経細胞ストレスにより起こる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、低酸素脳症のメカニズム解明のため、脳スライスモデル実験系を導入し解析を行ってきた。その結果、海馬神経細胞において低酸素ストレス刺激とζ型DGKの細胞内局在が相関することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、低酸素負荷における血球細胞のストレス指標を見出し、神経細胞における指標と比較検討を行う。この時、ζ型DGKの細胞内局在および他のDGKアイソザイムの局在等も検討する。
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