研究概要 |
【目的】重症敗血症は,集中治療室(ICU)において最も問題となる,いまだ救命困難な病態であり,敗血症に罹患した患者の重要臓器ではあらゆる形態の細胞死が起こっているとされている.しかし,オートファジーと敗血症との関与を報告する研究は未だほとんど無い.今回,敗血症の病態で,オートファジーが如何に関与しているかを解明し,その正もしくは負の制御によって敗血症病態を改善させることを目的とする. 【初年度の成果】敗血症時にオートファジーが促進されているか抑制されているかを,マウス腹膜炎敗血症モデル(盲腸結紮穿孔;CLP,cecal ligation and punctureモデル)にて検討を開始した.対象臓器としては,我々の既報で,マウスのCLP手術24時間後のオートファゴソーム数の増加が電子顕微鏡で確認されている肝臓において,Western blottingを行い,6,12,18,24時間後のオートファジー・マーカであるLC3タンパクの経時的定量を行った.その結果,現時点で各時間の施行検体数が少なく有意差はまだ得られていないが,6,12,18時間後では,LC3タンパク発現は,CLPでShamに比し上昇する傾向にあったが,24時間では逆にCLPモデルで低下傾向となった.これをリピートすることによって敗血症時のオートファジーの肝臓における振る舞いが判明すれば,敗血症の予後を大きく左右する敗血症性肝不全への有用な治療効果の機序の一つとして,オートファジー現象の制御という概念を臨床応用可能になると考える. また,GFP-LC3トランスジェニックマウスの胚を既に購入済みであり,それらを繁殖させた後にCLP手術を施し,各重要臓器細胞のオートファジーの動態をモニタリンクする予定である. 肺炎モデルに関しては,感染実験用の動物実験施設の一室を確保し,国立感染症研究所から細菌を取り寄せるところである.
|