研究課題
オートファジーは,細胞内のタンパク分解機構の一種であり,生命維持に必須であるが,過剰になると細胞死を惹起する.一方,重症敗血症は,いまだ救命困難な病態であり,敗血症に罹患した患者の重要臓器ではあらゆる形態の細胞死が起こっているとされている.今回,敗血症の病態で,オートファジーが重要臓器細胞で如何に関与しているかを解明し,その正もしくは負の制御によって敗血症病態を改善させることを目的とした.まず,オートファジー誘導を示す膜結合型のLC3-IIタンパク発現は,多くの重要臓器においてsham群(単開腹手術)に比しCLP群(C57BL/6雄マウス敗血症モデル;盲腸結紮穿孔手術)で増強していた.特に肝,心においてLC3-II発現は顕著に増加し,CLP6時間にピークとなったが,その後減少しCLP24時間ではsham群と同程度となった.そして,生体における唯一のオートファジーモニタリング手法とされるGFP-LC3トランスジェニックマウスを導入して免疫組織染色法にてオートファジー動態を肝組織で観察し,さらにオートファジー阻害薬(クロロキン:CQ)投与による肝障害度と生存率の変化を比較した.その結果,GFP-LC3(オートファゴソーム)とLAMP1(リソソーム)の共局在は,CLP6時間から24時間まで経時的に増加し分解過程まで至っていることが判明し,CLP群におけるオートリソソームの増加は電子顕微鏡でも確認された.またクロロキン投与後の平均生存時間はCLP 72.4hr,CLP+CQ 38.9hr,sham 144hr,sham+CQ 144hrと,オートファジー抑制により生存率が有意に低下した.さらにクロロキン投与により,肝細胞障害増悪(血清AST値上昇)も確認された.これらのことから,腹膜炎敗血症においてオートファジーは生体保護的に働いていることが示唆された.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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侵襲と免疫
巻: 22 ページ: 41-45