研究課題
炎症性骨破壊や骨粗鬆症では破骨細胞の機能が亢進しており、その抑制が重要であるが、歯科矯正では逆に破骨細胞の機能を利用することにより歯槽自体の移動を実現している。また骨棘の形成により中枢神経が圧迫され麻痺を引き起こすことがあり、侵襲を伴わない部分的な骨の除去法の開発が望まれている。ところで磁場がキノコ等の増殖を促進することが知られており、メカニズムは不明であるものの生物が磁場により影響を受けることが分かっている。このような磁場による効果は生物が鉄を細胞内に取込んで利用している為に生じると考えられる。以前より、破骨細胞のマーカー酵素である酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)が補酵素として鉄を使っていることと、血液中の鉄のキャリア蛋白質であるトランスフェリンの受容体(CD71)を高発現していることが知られていた。本研究では鉄を結合させた破骨細胞及びその前駆細胞を静磁場により操作することにより、骨の特定の部位に集積させ、方向性を持った効果的な骨吸収誘導を実現する方法論を確立することを目的とした。破骨細胞前駆細胞株を用いた試験内実験により、強磁場が破骨細胞分化に対して促進的に作用する傾向が認められた。また、トランスフェリンの添加により破骨細胞分化が有意に促進された。骨髄培養で形成された前破骨細胞にトランスフェリンを結合させたものを磁気細胞分離システム(MACS)を用いて分離することができた。更に、トランスフェリンを作用させたRAW-D細胞(RANKLで刺激)に磁場を作用させると、破骨細胞様多核細胞が強磁場の方向に集積して形成されることが分った。動物実験は現在進行中であり、結果が得られていないが、試験管内実験で破骨細胞を磁場の方向にひきつけることに成功しているので、有益な知見が得られるものと思われる。本研究により、骨の特定部位を標的とした骨吸収誘導が可能になるものと思われる。
すべて 2011
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Laboratory Investigation
巻: 現在電子版のみ(2011年2月21日出版) ページ: 1-13
The Journal of. Immunology
巻: 184(6) ページ: 3191-3201