研究課題
挑戦的萌芽研究
歯周病原性細菌P. gingivalisにおける病原性プロテアーゼ・アドへジン(付着因子)の膜輸送・分泌の調節機構の解明を目的として解析を行った。P. gingivalisの分泌・膜輸送に障害が起こると、病原性因子であるプロテアーゼや血球凝集素など付着因子が分泌されなくなる。このような表現型を示す遺伝子変異株12個のうち、2個は二成分制御系をコードする遺伝子の変異株と考えられた。二成分制御系は細菌における環境センシングとそれに基づく代謝の制御を行なう機構であり、環境状態を認識するセンサーキナーゼと下流のイベントを調節するレスポンスレギュレーターで構成される。本研究では、遺伝子porXとporYについて、組換えタンパク質を作製し、機能を調べたところ、PorYは自己リン酸化を起こし、PorY上のリン酸基は時間依存性にPorXに転移されることがわかった。PorYとPorXの相互作用はBIA-CORE生体分子相互作用解析装置によっても確認され、両者が二成分制御系を構成することが示された。さらに外界に反応して転写を調節するECF(Extracytoplasmic function)σ因子と考えられるPGN0274遺伝子変異株も、これら分泌装置遺伝子の転写が起こらず、プロテアーゼ・アドへジンの分泌障害を示すことがわかった。しかし、PorX-YシステムとPGN0274は独立した経路に位置することが示唆された。このことは、本菌の病原性因子分泌機構が、多重制御を受けて、巧みに調節されていることを示している。
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