研究概要 |
『視床下部の摂食調節中枢神経核群のパターン形成やニューロンの分化には、頭部中内胚葉による持続的な誘導作用が必須である』可能性が高い。しかしながら、哺乳類において、頭部中内胚葉による誘導、及び、摂食調節関連の神経核とニューロンの発生を連続して再現できる培養法は確立されていない。そこで、(1) 長期のラット全胚培養の後、引き続き、視床下部培養を行う長期器官培養法を確立し、(2) 培養脳をニッシェとして用いて、摂食調節ニューロンの再生法を確立することを本研究の目的とした。 まず、23年度の終了までに、前方中軸中内胚葉の除去実験によって、間脳の正常発生に必須であるShh, Fgf8, Bmp4と周囲の間葉のBmp2の発現が消失することを明らかにしており、また、全胚培養と器官培養の組み合わせ培養により腺性下垂体ホルモン(αMSH, ACTH,LHβ, TSHβ,αサブユニット)の発生が可能になる培養系を確立し、摂食調節神経核のパターン形成には頭部中内胚葉(脊索前板)が必須であることを明らかにした。しかしながら、ニューロンの分化過程では、酸素要求量が多いため、器官培養では正常に分化しなかった。そこで、血流を維持できる144時間の全胚培養によって視床下部の発生を再現する研究を開始し、120時間までの培養は80%以上(11/13, 10/12)で可能になり、また、頭部中内胚葉由来細胞の近傍でのPOMC産生細胞を発生する細胞の発生も確認された。しかしながら、144時間までに心拍動が失われた(生存数:4/13,2/12)。 そこで、24年度にはさらに培養条件の検討(ガス流量の適正化)を行なった結果、100%(12/12)が可能となり、144時間(8/12)の心拍動を維持できるようになった。現在、これらを用いて、摂食調節ニューロンの発生機構の解析と再生法の確立の検討を行っている。
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