1.次世代シークエンサーによる未分化間葉系幹細胞の遺伝子発現パターンの解析 未分化間葉系幹細胞と線維芽細胞のエピジェネティクス情報および遺伝子プロファイルの解明を実施するために、Solexaシークエンサーによる網羅的解析を実施した。その結果、骨芽細胞、軟骨細胞あるいは、脂肪細胞への分化能を有するST2細胞、C3H101/2細胞において有意に発現が高い転写因子群の存在を見出した。これら未分化間葉系幹細胞に発現している転写因子の発現は、分化形質を欠く、NIH3T3細胞、Balbc3T3細胞では低かった。 2.C/EBP alpha遺伝子の役割 上記の解析で見出された転写因子群の中で、C/EBP alphaに対する検討を進めるためにリアルタイムPCR解析を実施した結果、C/EBP alphaは、多分化能を有するST2細胞、C3H101/2細胞において高い発現を有していることが確認された。そこでC/EBP alphaの機能的役割を明らかにするために、アデノウイルスシステムを用いてC/EBP alphaをC3H101/2細胞に過剰発現すると、骨芽細胞および脂肪細胞への分化が誘導された。その効果は、骨形成因子BMP2によって、著明に増強された。一方、C/EBP alphaのドミナントネガティブ変異体の過剰発現は、C3H10T1/2細胞の骨芽細胞および脂肪細胞への分化能を著しく阻害した。したがって、未分化間葉系幹細胞の多分化能の維持には、C/EBP alphaが重要な役割を果たしていると示唆された。
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