研究概要 |
1.歯髄炎症時の歯髄リンパ管の新生、再生を解明する目的で、初めに免疫組織学的にVEGFR-3,LYVE-1,Prox-1抗体を用いて、コントロールとして健常組織のリンパ組織を染色した。その後に、実験動物の唾液、ヒト歯垢、ヒトう蝕象牙質をラット臼歯に形成した象牙質窩洞内に封入して生じた、歯髄炎時のリンパ管の分布・密度変化を健常時と比較して、リンパ管の分布に変化が生じていることを確認し、それが歯髄生活性を維持するためのlymphangiogenesisであると考えられた。 2.歯髄リンパ管網の多光子励起顕微鏡(Two-photon microscopy)を用いて形態学的に解析するために、歯髄リンパ管ネットワークを形態学的に検索しようと考え、顎下リンパ節、頸部リンパ節に蛍光microsphereを注入した。ただし、現在のところ高密度で歯髄内に検出できない。これを可能にするためには、注入した蛍光microsphereは歯髄以外の歯周組織に広がる方が多いため、大量の蛍光microsphereが必要となる。蛍光microsphereは高価であるので、十分な量を使用することができない。 3.酸素消費Oxygen consumptionの局在が象牙芽細胞層付近の歯髄表層で高いことを明らかにした。これは毛細血管網とともに終末リンパ網が関与していることを示唆していると考えられるが、今後はリンパ管壁の細胞膜の張力感受性機構および電位感知機構を解析し、硬組織で被われた歯髄というlow compliance環境下の間質圧調節機序を解明したい。
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