1)脳卒中患者の嚥下障害の発現と舌機能との関連について検討するために、国立循環器病センターに入院中の脳卒中急性期患者31名を対象に、嚥下障害あり群(19名)となし群(12名)に分類し、正中部に3点、側方後縁部に2点の感圧点を持つ舌圧センサシートを用いて計測した最大押し付け時舌圧と水嚥下時舌圧、唾液嚥下時舌圧について比較した。その結果、最大押し付け時舌圧に関しては、嚥下障害あり群は側方後縁部においてなし群より有意に低い値を示したが、正中部においては有意差を認めなかった。しかし、水嚥下時舌圧ならびに唾液嚥下時舌圧に関しては、正中後方部を除くすべての部位において、嚥下障害あり群はなし群と比較して低い値を示した。以上の結果より、舌の最大筋力の低下よりもパターン化された嚥下運動における舌のMotor controlの低下が嚥下障害の発現に関与している可能性が示唆された。 2)パーキンソン病患者15名(男性8名、女性7名、平均年齢66.1歳)について、舌圧センサシートを用いて水嚥下時の舌圧を測定し、健常高齢者31名(男性16名、女性15名、平均年齢66.0歳)と比較を行った。その結果、正中後方部を除くすべての部位でパーキンソン病患者の舌圧最大値は健常者よりも低下していた。また、「舌接触部位の欠損」、「正中部の接触順序の異常」の2つの異常所見について15名の患者の舌圧データを精査したところ、Yahrの重症度分類が高くなるにつれて異常の割合が高くなった。以上の結果より、パーキンソン病患者の嚥下時舌運動は口蓋との接触が低下しており、疾患の進行とともにその傾向が強くなることが示唆された。
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