研究課題/領域番号 |
22659355
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
春日井 昇平 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (70161049)
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キーワード | インプラント治療 / 上顎洞 / 骨造成 / 骨補填材 / PLGA / サイナスリフト |
研究概要 |
骨結合型の歯科インプラントを用いた治療(以下インプラント治療)は、歯が欠損した場合の治療法として確実な治療法となっており、従来の他の治療法に比較して利点も多い。上顎臼歯部欠損症例は極めて多いが、この部位の歯槽頂部から上顎洞底までの距離が短いため、上顎洞底の骨造成(上顎洞底挙上術、サイナスリフト)をおこなって、インプラント治療をおこなう症例は極めて多い。サイナスリフトには自家骨や様々な骨補填材が使用されているが、上顎洞粘膜を外科的に挙げ、埋入したインプラントで上顎洞粘膜を支えることで、サイナスリフトが可能であることが報告された注目されている。この手法(移植材を使用しないサイナスリフト)は、術式が簡便であること、インプラント以外の材料を使用しないので従来法に比較してコストが低いこと、移植材を使用しないので上顎洞炎を起こす可能性が低いと予測されることが大きな利点である。しかし、埋入したインプラントを機械的に固定するだけの骨が存在しない場合には、不可能である。そこで、サイナスリフトに必要なX線透過性材料を開発することを目的として、本研究をおこなった。このような材料を使用することで、上顎洞底に骨造成をおこなって、一定期間(4-5ヶ月)後に放射線学的に骨の造成を確認してからインプラントを埋入することで、より確実なインプラント治療が可能となる。 申請者がおこなったインプラントを用いた移植材を用いないサイナスリフトの30症例の予後を放射線学的に検討した。上顎洞底までの距離が1mmでもこの手法は可能であり、合併症は無く、全てのインプラントは機能していたが、上顎洞開窓部の骨形成が不十分な症例があった。吸収性のポリマーであるPLGAとハイドロキシアパタイトの粉末を混合したメッシュあるいはまたスクリューを用いることで、サイナスリフトが可能であることを確認した。この手法は放射線学的に骨造成を確認できること、上顎洞底までの距離が極めて近くインプラントを同時埋入できない場合にも有効であることが大きな利点である。この材料と手法に改良を加えて、さらに検討を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に臨床で使用されている材料に改良を加え、臨床術式を工夫することで、上顎洞内への骨造成が可能となった。学内倫理委員会の承認を得て、臨床研究をおこなっており、当初の研究計画通りに研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
現在までにおこなった臨床症例の経過を診ることと、材料の形状と臨床術式の改良を進める予定である。頬側の上顎洞の開窓部の骨形成が不十分な症例があったので、この解決方法について検討する予定である。
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