研究概要 |
平成23年度は,平成22年度に引き続き会合状態の分子レベル解析を行うとともに,再生医療や抗がん医療への展開を図るべく,抗菌薬(抗生物質)や抗がん剤を用いて,除法特性を評価した。 1.殺菌剤への展開 前年度の成果をもとに,リン酸化プルランと殺菌剤CPCとの複合体による試作DDSが,濃度変化に伴いキャリアとの会合状態がどのように変化し,さらにそのことが薬理作用にどのような影響を及ぼすか理工学的な分析手法を用いて解析するとともに,アパタイトへの吸着特性と抗菌効果を評価した。その結果,リン酸化プルランのリン酸化率により殺菌効果やターゲットであるアパタイトへの吸着特性が調節できることが示唆された。さらに,リン酸化プルラシのリン酸化率や分子量を最適化することにより,低濃度で著しく抗菌効果を発現するDDSとなることが明らかとなった。 2.抗菌薬(抗生物質)への展開 人工関節置換術等の術後に細菌性深部感染症を引き起こすことがある。その場合,PMMA骨セメントを用いた抗菌剤入りセメントビーズ法が広く用いられている。抗菌薬バンコマイシンを用いて薬物徐放能を検討したところ,リン酸化プルランはPMMAセメントよりも優れた徐放性を示し,より治療効果の高いDDSとなる可能性を得た。 3.抗がん医療への展開 抗がん剤であるメソトレキセートについて,前述の抗菌薬バンコマイシンと同様に試料を作製して徐放量を評価した。その結果,メソトレキセートの場合はバンコマイシンとはまったく挙動が異なり,PMMAをキャリアとした方がリン酸化プルランを用いるよりも早期に徐放することが明らかとなった。さらに,リン酸化プルランのリン酸化率や分子量を変えることにより,徐放速度や徐放量が調節可能であることがわかった。
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