アパタイトに代表されるリン酸カルシウムは組織親和性に優れるだけでなく、骨伝導性を示す場合もあることから人工骨補填材として着目されている。一方、骨には力学的機能だけでなく造血機能などの生物学的機能があることを考えると骨に置換される材料であることが好ましい。さまざまなリン酸カルシウムの中でリン酸三カルシウムやリン酸水素カルシウムは生体吸収性を示すことが知られている。さらにリン酸カルシウムが生体内で吸収され、骨に置換されるには細胞が浸入できる連続気孔構造が好ましく、操作性の観点から硬化性を示すことが好ましい。 本研究では骨に置換される多孔性のリン酸カルシウムを形成するセメントの創製の可否を検討する目的でリン酸三カルシウム球を調整し、調整したリン酸三カルシウム球をリン酸水素カルシウムで硬化させる検討を行った。 研磨法でリン酸三カルシウム球を調整し、リン酸溶液を練和として硬化反応を検討した。その結果、リン酸濃度にかかわらず溶液が中性あるいはアルカリ性の場合は硬化反応を示さないことがわかった。一方、酸性リン酸溶液を用いるとリン酸三カルシウム球が硬化性を示すことがわかった。そこで錬和液にさらにカルシウム成分を導入することを検討した。すなわち、リン酸第一カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸の三原系で成分濃度を変動因子として硬化液を調製し、リン酸三カルシウム球の硬化反応を検討した。0.2モル濃度相当のリン酸第一カルシウムを0.1モル濃度リン酸に溶解させて調製した錬和液が硬化時間、硬化体の機械的強さの観点から好ましいと結論した。
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