本研究は細胞周期関連分子(Cdk4/6)を利用した、新たな概念に基づく骨粗鬆症・遺伝性骨疾患治療薬の開発に向けた基礎的検討を行うことを目的として計画されたものである。具体的には、細胞周期関連分子(Cdk4/6)の発現・機能を変化させることで、骨粗鬆症・遺伝性骨疾患の改善が可能であるかを検討した。昨年度の解析では、初年度に発見したCdk6あるいはCdk4を抑制すると同時に骨芽細胞分化能を促進するCdk活性阻害物質の作用機序を明らかとする目的で、「さらに下流で働く因子」を網羅的手法によって検索し、細胞周期制御と骨分化の両方に関わる候補因子として複数のZincフィンガータンパクやGタンパク共有受容体等の存在を見出した。本年度は、これらの因子に関して実際の細胞内遺伝子発現を確認するために、まずリアルタイムPCRを行った。実際に細胞内で、その遺伝子発現が変化することが確認された分子については、遺伝子抑制により、細胞内機能解析へと進んだ。また、in vivoにおいては、遺伝子操作マウスの飼育ならびにダブルノックアウトマウスの作製を継続し、順次解析を進めた。その中でも、ある因子のヘテロ欠損マウスが呈する骨系統疾患の表現形が、Cdk6とのダブルノックアウトマウスを作成することで部分的にレスキューされることが判明した。すなわち、本研究によって、in vitroだけでなくin vivoにおいても、細胞周期制御を介して骨分化能がコントロール可能であること、また、骨系統疾患の治療が可能であることが示唆された。
|