研究概要 |
本研究は、口唇運動を中心とする顔面表情を表出する運動の定量化を試み、一方で、音声に対して線形および非線形力学解析を応用することにより音響学的特徴を探索し、さらに、両者の関連性を分析することにより口唇運動機能と音声言語機能の関連性を解析できるシステム構築を目指した。 赤外線パターン照射を併用した状態で3台の赤外線カメラと1台のカラーカメラからの動画像を用いて距離画像作成後、相同モデルとして、主成分分析を適応する方法を完成した。その結果、/u/発音時の口唇運動と他の母音発音時の口唇運動との相違を統計学的に抽出可能であった(J Cranio-Maxillofac Surg39(4); 232-236,2011)。次に、smile時の口唇の動きの再現性に関して、検者内信頼性係数(ICC(1,D)と検者間信頼性係数(ICC(2,1))を算出し、検討した。その結果、ICC(1,1)は0.73-0.83、ICC(2,1)は0.77-0.99であり、ともに高い再現性を有することが分かった(未発表)。 健常者、口唇口蓋裂患者、顎変形症患者を対象として、44KHz、16bitのサンプリングレートにて音声を記録した。線形解析どしてフォルマント等、非線形力学解析としてリアプノブ数等を算出した。その結果、健常者発話母音に、カオス性を認め、また、/a/では健常者より口蓋裂患者の方のリアプノブ数が高かった(FoliaPlloniatrLogop63(3):129-133,2011)。さらに、顎変形症術前後の音響学的特徴を健常者と比較検討した結果、フォルマントやリアプノフ数に相違を認め、術後多くのパラメータは変化なく残存することが分かった(J CraNio-Maxillofac Surginpress)。 以上如く、口唇運動の特徴量と音響学的特徴量の関連性を解析する手法を見出すことができた。
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