研究課題
近年、人工多能性肝細胞(iPS細胞)が発明され、細胞ベースの再生医療法の開発が注目を集め、脊髄損傷後の神経再生や糖尿病、肝硬変、アルツハイマー病などの疾患治療のみならず、毛根や網膜、歯の再生などの応用が期待されている。しかしながら、iPS細胞には癌遺伝子が導入されている点でその安全性に疑問があり、骨髄や臍帯血を用いた方法でも、幹細胞の獲得効率や簡便性という観点からも問題は多い。我々は、すでに薬剤としての安全性が認可されているGSK3β阻害剤あるいはその他の種々の人工低分子化合物用いて、比較的侵襲の少ない抜歯後の乳歯歯髄細胞に添加することにより、幹細胞を効率的に回収、増殖させる調整法の開発を目的として研究を進めている。我々はマウス歯乳頭細胞から樹立した細胞株mDP細胞に、GSK3β特異的阻害剤を処理することによって、歯髄細胞に存在する未分化幹細胞の集団と類似した特徴的な細胞形態を呈することを明らかにしてきた。また、それらの細胞は、Nanog遺伝子の発現がみられ、胚性幹細胞と同等の性質を持っている可能性を示唆する結果を得た。そこで、その細胞が、多分化能を有しているのかどうかを各種(骨、神経、脂肪)誘導培地にて、培養誘導の検討を行うこととした。これまでこれらの細胞を骨誘導培地にて、培養することによって、骨芽細胞特異的な分かマーカーの発現や有意な石灰化能を示すことが明らかとなった。今後は引き続き多分化能の検討を行っていく。また、歯原性上皮細胞におけるGSK3β阻害剤の影響を検討する。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は平成23年3月11日に発生した東日本大震災によって、多くの研究資源が損害を受けたが、ここまでのところ当初の計画に近い研究成果を挙げることができていると考える。
月毎に研究成果をまとめ、その成果の検討を行い、計画通りに遂行できているか評価を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
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