研究課題
不正咬合の発症頻度は歴史的に見て増加している。咀嚼機能が低下し,顎骨がしだいに退化縮小した結果であると考えられている。しかし、環境因子である咀嚼機能がどのように顎骨の形態の決定に関与するのであろうか?本研究の目的はエピジェネティクスという新たな概念を導入し、不正咬合の原因の分子機構を探る新たな基盤を確立することである。本研究では、環境要因が、クロマチンへの後天的な修飾によって、DNAの塩基配列を変化させることなく、遺伝子発現を選択的に活性化・不活性化させる後天的な制御(エピジェネティクス制御)に注目した。特に、顎口腔の機能の問題が形態に影響を及ぼす機序として、エピジェネティック変異が環境的要因によって生じ、DNAの内容そのものではなく、DNAの読み書きに影響が生じるという着想に至った。言い換えると、顎口腔の機能の問題が形態に影響を及ぼす機序として、エピジェネティック変異が環境的要因によって生じ、DNAの内容そのものではなく、DNAの読み書きに対する影響を検討するものである。本年度は、まず実験的不正咬合モデルマウスの確立をおこなった。これまで、硬い食餌と柔らかい食餌のどちらかを与え続けることにより、ラットにおいて下顎骨の形状に違いが生じることがすでに報告されている。そこで、実験モデルを確立するために、ラットと同様の条件でマウスの飼育を行い、一方には十分に乾燥させた食餌を与え、もう一方には水で溶かした流動食のような状態の食餌を与えた。で8週齢になるまで飼育し、頭蓋骨と下顎骨を採取した。採取後、マイクロCT撮影によって、頭蓋骨と下顎骨の形状、大きさを計測した。その結果、流動食の食餌を与えたマウスにおいては、下顎骨の形態が有意に変化することを見出した。現在、これらの組織から得られたmRNAを解析し、発現の変化が見られた遺伝子を同定中である。
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Cells Tissues Organs
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