本研究では、ビスフォスフォネート(BP)を投与された軟組織(粘膜)および硬組織(歯・骨)からなるマウス口腔内において、歯周病菌の共存が細菌学的・免疫学的影響を及ぼし、顎骨壊死(BRONJ)発症に関与するという仮定を検証する。 すなわち、C57BL/6Jマウス(5週齢、♀)にチッ素含有BP(パミドロン酸ニナトリウム)を3ヶ月間(15μg/匹/週)静脈注射投与しBP長期投与マウスを作製する。そして、下顎臼歯抜歯直後、歯周病菌(1×10^7)を口腔内投与し、歯周病菌感染BP投与マウスを作製、歯周病菌感染後の歯肉粘膜部および歯槽骨部における細菌学的・免疫学的検討を行った。コントロールとして非感染BP投与マウス群および感染BP非投与マウス群を用い、昨年度は、下記の事項を検証した。 1)抜歯後、歯周病菌経口感染後の菌定着状態、および抜歯窩の肉眼的検討。 感染後10日目において、Real-time PCR法により抜歯窩(下顎骨)に定着している粛周病菌数を測定した。両コントロールマウス群では、菌が同定されなかったものの、感染BP投与マウスでは、有意に高い割合で歯周病菌が同定された。また、創傷粘膜部位の潰瘍および腐骨形成部位をPAS染色し検鏡したところ、感染BP投与マウスにおいて、強い炎症性細胞の集積、そして、歯周病菌の存在が認められた。 2)抜歯窩部のCD11b^+マクロファージ(Mφ)およびCD4^+T細胞による破骨細胞分化関連サイトカインの発現解析。 両コントロール群と比較した時、感染BP投与マウスのMφからの炎症性サイトカインIL-1β、T細胞からは、破骨細胞の分化抑制サイトカインであるIFN-γ、IL-4の有意な発現誘導が認められた。 以上より、BP投与マウスでは抜歯窩における歯周病菌の定着が促進し、そして、抜歯窩における免疫担当細胞による破骨細胞分化に関わるサイトカイン発現に有意な差が認められた。
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