本研究は双方向性の「ストレス・脳・腸」という軸における包括的研究から、ストレス耐性強化に資する簡易健康法を開発しようとするものである。平成22年度では次の研究を行った。1.胃腸運動を胃腸電図として誘導する方法の確立:健常成人において、お握りと麦茶を摂取して胃結腸反射を誘発し、その前後35分間の胃腸電図のパワースペクトル解析を行った。その結果、腹部体表への電極設置位置および胃腸各部位の特異周波数帯を明らかにし、胃腸活動が正確に測定できることを確認した。さらにカオス解析の適応可能性についても検討した。2.口腔リラックス法のリラクセーション効果の検討:本研究固有のリラックス法である「半眼でゆっくりと呼吸しながら口を閉じ、舌の力を抜いて口の中にピンポン球を頬張るような感じで下顎を下げ、舌先を下歯の歯肉の付け根に軽くあてる」に関するものである。こうすると口腔内に球形の空間ができ、唾液核につながる副交感神経活動が亢進して、生暖かい漿液性の唾液が分泌されてきて、ほっとしたリラックス感を覚える。脳波、心拍変動、唾液分泌量、心理指標調査を行った結果、有意な心身のリラックス効果が確認できた。3.腸マッサージと腹巻きの併用による腸健康法の継続実施による消化器症状の改善とストレス耐性強化効果の検討二毎日の腹巻き装着と就寝前の腸マッサージを1ヶ月間、慢性的に腸に愁訴を抱える成人に行ってもらった。その結果、日本語版消化器症状調査票GSRSおよび日本語版日常いらだち事調査票GHQの得点が改善された。また、ストループテストと暗算を併せたストレス負荷に対する胃腸運動と心拍変動の変化においても、交感神経の興奮が抑制されていることが認められた。
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