研究概要 |
本研究の目的は,意識障害患者に対して意識レベルを改善する目的で行われている種々の刺激が,生体に対してどのような機序で意識レベルの改善に影響しているかについて健常人を対象に検討し,臨床における看護ケアの理論的な根拠を明らかにすることである。具体的には,種々の感覚刺激(痛覚刺激,聴覚刺激,芳香刺激,温浴刺激など)の強度と意識レベルの変化がどのように関連しているかを生理的指標(意識レベル,脳波,自律神経活動)および心理的指標から検討することで,意識障害患者に対して実施されている種々の看護援助技術の科学的な根拠が得られるものと期待される。 本年度は,意識レベルを評価するための機器であるBISモニタVista(日本光電;A-3000))を導入した。本機器は前額部に装着した電極から脳波(EEG)を記録し,脳波波形をディスプレイに表示すると同時に脳波をリアルタイムに分析処理することで,意識レベルをBIS値(Bispectral Index^<TM>)で表示することができる。BIS値は継続的に解析されているEEGのパラメータの1つで,被験者の催眠の深さ(100:覚醒~0:催眠)と相関する。100は覚醒状態,100~80は普通の声に反応,80~60は大声による命令,軽度の刺激や揺れに反応する状態,60以下は呼びかけに対して無反応,0は脳波がフラットになった状態を示す。被験者をベッドに60分間臥床させ,入眠時の脳活動と意識レベルを脳波の周波数解析とBISモニタによる意識レベルの関連性を検討した。また,心電図のR-R間隔から算出される自律神経活動から交感神経系と副交感神経系の活動状態についても関連性を分析した。その結果,入眠後20分ぐらいまでにBIS値は60~70にまで減少した。また,それに対応して副交感神経活動(HF)の増加がみられた。以上のことから,BIS値と自律神経活動に関連性が認められた。
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