本研究は、がんと共に生きるがんサバイバーが、生活上の様々なストレスに対する対処能力を高めることを目的としたケアプログラム(セルフトリートメントシステム)を開発することを目的とした。特に、多様な副作用が複合的に生じる中で治療と生活の両立をはからなければならないホルモン治療中の乳がん患者に焦点をあてた。 セルフトリートメントシステムは、①「ホルモン治療中の乳がん女性が治療とうまくつきあうためのチェックシート」と、②情報提供コンテンツから成る。①チェックシートは、信頼性・妥当性を検討した。3施設の乳腺外来にて通院治療をしているホルモン治療中の乳がん女性214名からのデータを分析した。構成概念妥当性検討の因子分析を行った結果、副作用症状22項目、苦痛18項目、治療継続の有無4項目、対処28項目となった。信頼性係数は概ね0.7以上となり、併存妥当性のためのQOL尺度との相関も強い相関が得られた。初期の尺度としては十分な信頼性と妥当性を確保できた。チェックシートはコンピューターによる入力システムを構築し、即座に結果が出力できるシステムとした。集計結果を基にしてアルゴリズムを構築し、出力データにはサバイバーへのメッセージを表記できるようにした。②情報提供コンテンツは、既存の文献および薬剤パンフレットなどを参考に開発した。コンテンツは「ホルモン治療とは」「副作用症状とその対処」「ストレスとのつきあい方」「情報の活用方法」「家族へのメッセージ」の5つを作成し、上記コンピューターに内蔵し、患者がいつでも閲覧できるシステムとして開発した。このシステムは外来受診時に入力し、データを蓄積できるシステムとした。 このシステム活用により、サバイバーの自己管理が促され、医療者とのコミュニケーションが促進すると予測される。今後は、このシステムの介入研究を行い、その効果を明確にすることが課題となる。
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