研究の1年目は熟練助産師の分娩介助時の両手の圧力を測定し、分娩時に両手掌にどのような圧がかかっているかを解明した。目的:熟練助産師の分娩介助時における両手掌にかかる圧力を熟練助産師と初学者との比較から明らかにすることである。方法:ニッタ(株)の把持力分布測定用グローブおよびソフトウエアを使用し測定、分娩の状況として、排臨・間欠・発露1・間欠・発露2(25・20・25・20・25秒)の陣痛発作・間欠を模擬分娩として作り、ファントームを使って、分娩介助を実施する。その時の肛門保護あるいは会陰保護時にかかる両手掌の圧力を測定する。グローブの20個センサを両手につける。対象;5年以上の助産師12名、分娩介助の助産実習を終えた学生12名である。結果:熟練者は、全体的に圧力は強くかかっていない。肛門保護から会陰保護に変わるときの左手と右手の使い方は調和がとれている。肛門保護から会陰保護へ変えようとするときは、左手は児頭を必ず押さえており、飛び出しに注意をしている。しかし初学者の場合、両手が全く離れてしまうことがある。同じ、状況設定をしているが、熟練者の方が第1発露の状況で会陰保護にかえているのに対し、初学者はそれより遅くなっている。また、5本の指の圧力の推移を見てみると、熟練者は圧力の数値に個人差はあるが、掲示的な分娩状況に応じての圧力のかけ方が非常に似ている。一方、初学者の場合はまったく、ばらばらである。同じ様な動きが見えない。考察:初学者は分娩時に力が入るというのは先行文献でも言われているが、本研究においても同様であった。熟練者は圧力を強くかけるというよりは、力を掛ける、力を抜く時期というように、経時的にみるとそれが共通しており、圧の調整力が身についている。また、両手の連動がスムーズである。熟練の特徴が見えてきている。これを、次年度においても更に分析し、可視化する方向に進めていく必要がある。
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