研究概要 |
妊娠中の女性の睡眠呼吸障害(Sleep Disordered Breathing:SDB)が分娩に及ぼす影響を検討する目的で,一地方都市にある産科医療施設において,妊婦健康診査を受けている妊娠28週以降の妊婦179名を対象とし,パルスオキシメータを用いて,夜間睡眠中の睡眠1時間あたり末梢動脈血中の酸素飽和度を測定し,酸素低下指数(oxygen desaturation index:ODI)を算出した。判定基準はSDBなし(3%ODI<0.5),正常範囲内(0.5≦3%ODI<5),軽度(5≦3%ODI<15),中等度(15≦3%ODI<30),重度(3%ODI≧30)の5区分とした。その結果、ODI判定では3%ODI<0.5は38名(21.2%),0.5≦3%ODI<5は119名(66.5%),5≦3%ODI<15は22名(12.3%),15≦3%ODIは0名,3%ODI≧30は0名であった。すなわち、中等度以上の睡眠呼吸障害を疑う妊婦は存在しなかったため,軽度の睡眠呼吸障害の可能性を疑う(3%ODI≧5)22名と正常群(3%ODI<5)157名の比較を行なった。出産歴および肥満を交絡因子とした調整オッズ比は、「予定帝王切開手術・自然経腟分娩」を基準とすると「緊急帝王切開手術・吸引分娩」での調整ORは5.18(95%CI1.44-18.65)であった。したがって,夜間の覚醒回数や睡眠問題について訴えの多い妊婦に対しては,パルスオキシメータによるスクリーニングを活用し,早期に睡眠状況の改善や睡眠問題の治療に繋げることが重要と思われた。
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