本研究の目的は、出産体験はどのように意味づけられているのかを出産した女性の生きられた経験として記述することである。初年度である平成22年度は、研究の準備段階として女性の出産体験の意味づけに関する文献と記述的現象学および解釈学的現象学に関する著書を読むこと、現象学的心理学の研究者であるAmedeo Giorgiのワークショップに参加すること、予備調査を実施することにより、研究上の問いと分析方法の再検討を行った。 予備調査では、研究参加への承諾を得られた2名にインタビューを行った。1名は、1回経産婦で第1子を緊急帝王切開の準備をしながら吸引分娩により出産、第2子を3年前に正常な経過で出産したケースであり、もう1名は、初産婦で分娩時異常出血となったケースであった。いずれのインタビューイーも、出産にかかわる行為や出来事について、自己の意識、態度、信念を振り返りながら意味づけていることがわかった。また、2名のうち1名の語りは、Kenneth J.Gergenが提唱する物語となっている可能性が示唆された。これらを踏まえて、研究者の立ち位置は、行為や出来事の意味を解釈学的アプローチにより理解する態度をとることが再確認された。現在は研究上の問いを焦点化しつつ、問いに適した研究参加者の募集を行っている。
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