本研究目的は、胎児機能不全や新生児の無呼吸など突然死とも密接に関連すると考えられる自律神経機能について、妊娠末期から出生直後までの測定を行い、現在広く用いられている胎児心拍陣痛図では発見不可能な急変の要因につながると考えられる特異な現象や変動を探索すること、さらに母体の自律神経機能との関連も検討したうえで胎児・新生児の安全性の向上につながるエビデンスを導出することである。 研究方法は、胎児の自律神経機能やその経時的変化の解明のために、超音波の胎児心拍信号を用いる。心拍信号を出力できるよう改造した分娩監視装置を用い、心拍信号を収集し、自律神経の解析ができるデータ形式に変換するプログラムを開発する。変換したデータを解析し、自律神経機能を解明する。さらに母体の自律神経機能との関連を検討する。 平成22年度~23年度は、心拍信号を解析用のデータに変換するプログラムの作成と平行して、変換したデータの妥当性の検証のために、成人10名および新生児6名に対し、同時に心拍信号の収集と心電図測定を行い、各データの一致率や、各データをそれぞれ周波数解析し、心拍変動解析による自律神経活動の指標となる高周波成分、低周波成分等の値について相関等を検討し、心拍信号を自律神経解析に用いることの可否を検討した。 平成23年度~平成24年度は、妊婦22名のデータを収集し、胎児心拍信号を変換し自律神経機能の解析を行うとともに、同時に測定した母親の心電図のRRデータから自律神経機能の解析を行い、母児の関連を検討した。また胎児の心拍信号使用の妥当性の検証のため、超音波エコーの使用についても検討した。 これらの結果を踏まえ、今後は、胎児の心拍信号の使用の妥当性を超音波エコー画像との比較などから検証し、胎児期から新生児期の自律神経機能発達をさらに明らかにできるよう研究を継続していく予定である。
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