本研究の目的は、認知症高齢者のワンダリング行動が気象による影響を明らかにすることである。研究方法は4地域に所在するグループホーム9施設に協力依頼し、居住者の認知症高齢者16名のワンダリングに関連する行動観察を行った。なお、高齢者の家族の同意を得た後に実施した。実施時期は22年11月・12月と23年2月・3月の間に各2週間である。女性は13名、男性は2名で平均年齢±標準偏差は84.2歳±6.5であった。対象のワンダリング発現の可能性をスクリーニング(Jan Dewing:2005)すると、発症前の習慣では、定期的な散歩習慣があった人16人中7人(43.8%)、ストレス対処行動としての歩く習慣有(46.7%)、外交的人付き合い(56.3%)であった。1年以内の生活状況では、住居の移動有(41.1%)、介護者の後を追う行動有(12.5%)、じっとしていない行動有(43.8%)、所持品探し行動有(31.3%)、家を出ようとする行動有(56.3%)、所在不明経験有(50.0%)であった。ワンダリング発現の可能性のない対象は無かった。ワンダリング行動は対象毎に多様であった。87歳の男性で診断名アルツハイマー病、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準IIIaの状態にあるA氏の場合、ワンダリングは「特定の人を探し歩く」行動がみられ、また、「不穏」を表す行動の特徴があった。A氏において、雨量1mm以下の日と雨天日とではワンダリング行動の発現率に差があるかを検定(Fisherの直接法)した結果、有意差がみられなかった。不穏についても有意差がみられなかった。一方、気温5℃未満日と5℃以上日のワンダリング行動は有意差がみられ(P=0.002)、5℃以上の場合にワンダリング行動が多かった。不穏においても有意差がみられ(P=0.02)、5℃以上では不穏の発現が多かった。平成23年度の課題は、前述したように対象毎にワンダリング行動およびワンダリングに関連した不安、感情障害等が多様であるため、行動の分類を試み、行動のパターン別に季節・気象との関連を分析する。
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