研究初年度の22年度は、この自死遺族の夢の中での死者との再会のナラティヴ・イメージワークという挑戦的萌芽研究を実施するにあたり、まず札幌医科大学倫理委員会の倫理審査に諮ることから始めた。研究者の出張と倫理審査の日程がぶつかり、予定よりも時間を要してしまった。倫理審査の承認をいただいた後は、本研究の核となる研究協力者により描画作業とその描画データのデジタルデータへの変換と保存のための道具や資材をそろえることを行った。購入予定であった画像データ処理に優れたハードウェアとソフトウェア機材が、製品の型代わりの時期にあり、発注に手間取るなどしたが、研究の進行に十分な能力を備えたものを準備することができた。 肝心の研究協力者を掌握する算段だが、自死遺族の方々との接点は切らさずに維持することができているが、夢の報告しかも自死で亡くなった身内の夢という条件になるとそれを記憶し研究者に語れる状況にある人は思いの他、少ない。この点に関しては、まず睡眠中の夢に関心を持ってもらうこと、夢を何らかのかたちで書き留めるなり、メモするなどして記録してもらうこと、という手続きを研究協力者の候補となる自死遺族の方たちにお願いしなければならないと考え、準備を進めている。改めて研究協力へのお願い文を作成し、関心を持ってくれる方たちに、夢を書き留めるためのミニノートのような簡素なフォーマットのあるメモを渡すなどして、夢への関心と記録の可能性を高める工夫が有効なのではないかと思われる。このような工夫を凝らしている段階であり、22年度は研究協力者からのデータ提供が得られていない状況である。
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