学生の精神保健活動における訴えを言語構成的に分析した。具体的には、入学時の学生の健康状態をチェックするリスト上で、視線が気になるなどの精神健康を尋ねる項目にチェックを入れるよう学生に依頼した。精神健康関連事項にチェックした学生を後に面接し、精神健康に関する自覚的な問題の意味するところを尋ね、必要時には大学保健センターにて専門的フォローを行った。この結果から精神衛生上の専門援助必要群と不要群の二群に分けた。これら二群間で書く学生が各自の問題をどのように表現しているかを分析し、特徴を抽出した。この結果、専門的援助必要群は不要群に比べて、問題の表現形式のバリエーション自体が少なく、総合して話題の中心、すなわち文章の主語に相当する関心対象は自分自身の不能感などを表現する形式のものが多かった。特徴的な具体的表現を示すと「朝、起き上がれない」、「電車に乗り続けていられない」、「どうしようもなくなる」などであった。また、これに対して不要群では、不能的な表現も減少し、相対的に自分に起きていることを客観的に表現し精神状態が自我の管理下にあることを暗に示唆している表現が多かった。また話題の中心は、自身以外の関心事が主語に来ることが多く、表現形式は多彩であった。また、一方で援助側においては、長期在院を扱う看護職は自己の援助を語る際に、他者の不能感、能力を語る形式を特徴的に取り得ることが明らかとなった。 従来の精神科的評価のあり方は、言語と非言語の双方をみていくことが推奨されているが、ことに言語よりの付随的行動よりは言語的で、テキストの内容よりは非言語的領域に属するこれらの言語配置、特徴的表現形式などは精神的問題との関連の中では取り上げられていない。いわゆる一般に言われる「言い方」の問題として精神的問題のアセスメントを行う体系作りの一助となるものと考えられる。
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