精神保健医療のサービスを必要とする人々の特徴を明らかにすることは、精神保健活動の中でも重要な課題である。早期の介入とサービスの提供は問題を抱える個人にとっての生活の維持のみならず、家族などを始めとした社会的な機能喪失を防止する意味でも意義を持つ。このため、精神科専門サービスの対象となる人々の可能性を、精神科専門職以外の人々が同定し、柔軟に対応できる基盤を整えることは必要なことである。 このため、精神保健サービスを活用した群としていない群間で、自らの問題をどのように語るのかを自然言語処理に基づいて分析を行った。対象は一大学の学生で、各年度4月に自記式で記入した自身の精神状態に対する有訴項目(例:視線が気になる)が「どうなっていますか」という窓口での看護師の対応に対する学生の説明内容をテキストマイニングにて分析し、これを精神衛生サービスの利用の有無でグループ分けし差異を確認した。なお、精神衛生サービスの適否に関しては、精神科医の判断の下に群分けを行った。 その結果、学生にとっての生活の場として物理的にも心理的にも最も近いと考えられる大学の学習や課外活動、友人関係、人間関係に関する内容についての言及が精神衛生サービス利用群において非利用群より有意に少なく、入学以前の事象を過去の形式で話すか、現在に至る形式で話すものが多いことが明確となった。しかしこの様な回答は、入学後の有訴症状の現状を説明するという脈絡の中では矛盾している。むしろ、彼らの訴えは、その経過の説明に割かれることが多く、かつ、現状の辛さなどは前景に出ないことが示された。 少なくとも精神科的な問題は、それら自体が問題として語られるのではなく、それが問題であるという説明に傾倒することが明らかとなった。また一方で、サービスを要しない群は、現在に表現された内容の中心がおかれていることも併せて示された。
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