1.文献検討 高齢者の転倒予防策の変遷について、医学中央雑誌・MEDLINEにて文献検討を行った。「高齢者」「転倒」「予防」等のキーワードで1983年~2010年5月の期間で検索した。結果、日本は2005年を境に転倒原因分析や事故後の介入研究が転倒前の介入へ、対象は高齢者から職員に変化した。国外ではさらに発展し2000年以降は、協働による転倒予防プログラム開発へと変化していた。高齢者の転倒予防は、高齢者自身への介入から高齢者を支える多職種や家族を含む協働へと変化していた。しかし具体的な方法は未だ示されず、転倒予防に有効な協働の在り方の研究の必要性が示唆された。 2.実態調査 平成22年度は上記の研究動向を踏まえ、利用者から職員へと着眼点を転換し九州・沖縄の530施設の介護老人保健施設の職員を対象に、職種間協働の実態調査を無記名自記式郵送調査で行った。主な調査項目はJCAHO(医療施設評価合同委員会)が示す転倒の根本原因の5項目(職員の不十分なコミュニケーション・アセスメント・ケア計画・管理・ケア環境)と転倒件数の推移である。施設毎に施設管理者・ユニット管理者を各1名、ユニット管理者と同一ユニットの職員3名(多職種)を選出してもらい、個別封筒に厳封し施設毎に回収した。 149施設(664名)から回答を得た。施設整備は99.3%実施(定期点検59.3%)、補助具の定期点検は46.8%など、環境整備の不備が示唆された。転倒予防に関する情報共有・アセスメント・ケア計画・評価の実施の有無は、ユニット管理者と職員で認識の相違があった。同一ユニットの職員でも認識に相違があり、具体的な実施方法は同一ユニットでもすべて回答が一致した施設はなかった。 この結果から平成23年度は、転倒件数が減少傾向にある施設に職員教育の実態を聞き取り調査し、有効な職種間協働のあり方を検討する。
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