本研究は、無線センサネットワークの実用化の障壁になっているエネルギー供給問題に対して、電磁界共振結合技術を用いた解決策を示す。具体的には、データと電力をセンサノード間で無線伝送し、系としての長寿命化を目指す革新的なアーキテクチャの確立を目的とし、無線電力伝送のハードウェア技術だけでなく、各ノードの蓄電量,電力の伝送距離と伝送効率を考慮した通信プロトコルを含めた包括的なネットワークセンシングアーキテクチャの実現を目指す。 本年度は共鳴型無線電力伝送を用いてエネルギーをやり取りできるスマートタイルの設計と実装に成功した。本システムの特徴は、タイルを構成する基本ユニットを平面状に並べるだけでその平面上に存在する機器同士でエネルギーをやり取りすることができる。これまでにも平面状の機器に電力できるシートは存在したものの、給電点は一点に限られ、双方向のエネルギーのやり取りは不可能であった。今回電磁界共振結合を用いた共振器をマルチホップ結合することでそれを可能にした。共振器を複数並べると共振器に流れる電流値がばらつくと一様な磁界を平面状に構成することができず結果として給電可能な点と不可能な点が混在してしまう。そこで各共振器で電流値が一定になるようなコイルのインピーダンス制御法を考案しシミュレーションと実装によってその有効性を示した。 また、センサネットに適した共振器として両面スパイラルコイルを用いた共振器の特性解析をこなった。この知見により、給電効率と薄さを両立した共振器の設計が可能になる。
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