分散システムの大規模実験プラットフォームOverlay Weaverでは、平成21年度の時点で60万ノードでの実験が可能であった。平成22年度には、本補助金で購入した実験用計算機を用いて、100万ノードを超える規模ので実験を行った。その結果、125万ノードの実験を達成した。 平成23年度は、さらなる大規模化のために、複数のコンピュータを用いた分散シミュレーション機能を用意した。これにより、数百万ノードの実験について目処が立ち、現在、実験を進めている。 一方で、大規模化に向けた現在のアプローチには限界が見えてきた。コンピュータ数台ならともかく、それ以上の台数を束ねて分散シミュレーションを行うためには、シミュレータの側に高い要件が求められてくる。具体的には、台数を増やすに従ってノード数やシミュレーション性能が向上していくというスケーラビリティ、通信トラブルなどに対応できる耐故障性などである。つまり、シミュレータ自体に、分散システムとして高度な機能、性能が求められてくる、ということである。この方向の研究・開発は依然続けていくとして、別の方向の模索も始めた。 平成23年度からは、それまでとは異なるアプローチに着手した。つまりは、汎用の分散処理システムを用いたシミュレーションである。例えば、その有用性が認知され始めた分散グラフ処理系を用いて分散システムのシミュレーションを行う。このアプローチでは、汎用ソフトウェアに起因する多くの利点を享受できる。つまり、シミュレーションだけでなく様々な目的に用いられることによるソフトウェアとその作り方の成熟、また、耐故障のための機能などである。現在、グラフ処理系などを用いたシミュレーションを試行しており、その課題が明らかになりつつある。
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