研究概要 |
写実的画像生成に対するニーズの高まりから,実画像から物体のモデルを獲得する研究が活発に行われている.本研究課題では,物体の幾何学的・光学的モデルを同時に獲得できる技術として再び注目を集めている照度差ステレオを一般化することで,簡便に物体のモデリングを行うことを目指す.特に,ユーザがフリーハンドで動かす光源,いわゆる未較正光源の下で撮影された画像から物体のモデルを獲得する技術を開発する. 今年度は,方向が未知の遠方光源を用いた物体のモデリングに取り組んだ,提案手法では,物体表面の各点を様々な方向の光源の下で観察される陰により符号化して,符号の類似度を手掛かりにして法線を推定する.提案手法は,対象物体の形状が凸で,かつ,光源を対象物体の周りで一様に動かす場合には,百枚程度の画像を用いて,物体表面の法線を高い精度で推定できる. 一方,対象物体が凸でない場合には,影や相互反射の影響により観察される陰符号に外れ値が含まれることから,法線の推定精度が悪化すると考えられる.そこで,非凸領域の法線の推定精度を実験的に検証するとともに,ロバスト推定(外れ値除去)を用いた提案手法の拡張について検討を行った. また,陰がGBR(Generalized Bas Relief)変換の下で保存されるために,陰からの形状復元には一般に不定性がある.提案手法は,光源分布の一様性に基づいて不定性の問題を解決しているが,光源分布が一様でない場合には,推定された形状に歪が生じる.そこで,光源分布の偏りに基づく光源の重みを導入することにより,非一様分布光源の影響を緩和するような提案手法の拡張を実現した. 提案手法の副産物として,推定された法線から光源方向も推定することができる.方向が既知の光源下の画像が大量に得られることになるので,それらの重ね合わせにより,任意照明下の画像を生成することを検討した.
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