写実的画像生成に対するニーズの高まりから,実画像から物体のモデルを獲得する研究が活発に行われている.本研究課題では,物体の幾何学的・光学的モデルを同時に獲得出来る技術として注目を集めている照度差ステレオの一般化を行い,非専門家のユーザが利用し易い技術の確立を目指す. いわゆる古典的照度差ステレオは,物体表面の反射特性がランバートモデルに従い,光源の明るさと方向が既知で,かつ,カメラの応答関数が線形であることを仮定している.カメラの応答関数は,シーンの物理的な明るさと画素値との関係を記述するものであり,古典的照度差ステレオでは,シーンの物理的な明るさが画素値に比例することを仮定していた.ところが,民生用カメラの応答関数は,一般に非線形であるため,陰影を手掛かりにして実物体のモデリングを行うには,マシンビジョン用の特殊なカメラを用いるか,あるいは,民生用カメラの応答関数を事前に校正する必要がある. 平成23年度は,カメラの応答関数に関する仮定を緩和することに取り組んだ.具体的には,物体表面の法線と拡散反射率を推定するのと同時に,カメラの応答関数を自動的に校正する手法を提案した. 平成24年度は,前年度の研究成果をさらに発展させて,カメラの応答関数に関する仮定を緩和するだけでなく,物体表面の反射特性に関する仮定も緩和することに取り組んだ.具体的には,いわゆるロバスト推定の枠組みに基づいて,ランバートモデルに従わない鏡面反射成分などを外れ値として扱うことで,ツヤのある物体に対しても,物体表面の法線と拡散反射率を推定するのと同時に,カメラの応答関数も自動的に校正する手法を提案した.実画像ならびに合成画像を用いた実験を通して,提案手法の有効性を確認した.
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