研究課題/領域番号 |
22680018
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉原 知道 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70422409)
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キーワード | 運動制御 / ロボティクス / 非線形力学系 / 身体科学 |
研究概要 |
本研究の目的は、人の運動を、身体・環境・制御器の三者が生み出す「力学系の変容」として理解する新たなパラダイムを確立すること、およびこれに基づいて、人型ロボットの多様な全身運動を統一的に実現する大域的安定な制御器設計のための基盤理論を開発することである。本年度得られた成果は次の通りである。 1.研究代表者自身の先行研究において、前額面内の運動に限定されていた立位制御と定常的二足踏み替え制御に基づき、前後進方向の任意目標速度に追従する制御を新たに提案した。立位制御においてシステムの極のうち一つを0にすることで、レギュレータが速度追従系へと変容する。これに、既に提案していた立位安定判別規範に基づいて転倒防止を保証する遊脚足先制御と、移動に伴う立位安定化参照位置の自動更新を組み合わせ、歩行による継続的な前後進移動が可能となった。 2.運動計測実験を行った。東京大学情報理工学系研究科力学制御システム研究室のご協力を頂き、立位制御、重心揺動、定常的踏み替え制御の各々において大域的な相図を実測により獲得するため、計測実験プロトコルを立案し、それに基づいて実験実施した。得られたデータを相図にプロットし、理論式との関係を定性的に考察した。 3.昨年度までに開発していた姿勢推定器を、現状のデファクトスタンダードである非線形カルマンフィルタと比較し、特に推定精度を高めるためのパラメータチューニングにおいて大きな優位性を持つことを確認した。 4.先に開発していたモータドライバ、センサ信号処理ボードを統括するシステム設計と基板開発を行った。商用のプロセッサボードと接続する専用I/Oボードならびにモータドライバ等を高密度に搭載し通信するためのインタフェースボードを製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は平成22年度に常勤職に異動し、エフォート率は変わらないものの、実働時間の再考を余儀なくした。研究室立ち上げから一年経過した平成23年度は、研究体制が改善されたが依然リソースが不足していた。運動計測により得られた結果は、解析困難な箇所も含めて概ね予想通りであった。解析に向けたツール製作の開発が計画より遅延している。ロボット用電子基板製作も、電源供給部まわりの動作不良が発覚した。
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今後の研究の推進方策 |
残り期間を考えれば、当初予定していた環境の確率的表現については遂行が難しいと思われる。それよりも本筋である、3次元的な全身運動への表現拡張(現在は2次元)に注力する。運動計測については見通しがある程度ついており、二回目の計測実験は予定通り行う。それまでに、解析困難が予想された箇所の扱いについて議論を深め、解析処理方法を幾つか試行する。最も遅れているロボットの新規開発は、本年度増員し、全体でも優先的に進めることとする。電子基板の動作不良は昨年度から継続して調査中である。
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