研究概要 |
日本在住者(主に長崎市域,福岡市域在住)およびドイツ在住者(主にミュンヘン市域在住)を対象として,環境音条件下で接近報知音に求める音量に関する音響心理実験と社会調査を実施した。 音響心理実験では,被験者にバイノーラル録音された環境音と接近報知音を提示し,提示された環境下において自分が望む音量に接近報知音の音量を調整するよう求めた。本実験で評価対象とした接近報知音は,無響室内でダミーヘッドの右斜め後方2mの位置に設置されたスピーカから再生され,バイノーラル録音された。環境音刺激は,4種類で,いずれも福岡市内の歩道上でHATSを用いて録音された。その結果,環境騒音レベルによって接近報知音に求められる音量は異なり,一律の音量で設定されるべきではないことが示唆された。また,最適聴取レベルと検知レベルの差が10~20dB程度で,接近報知音の特徴によることが確認された。結果から,静かな環境でちょうどいいと評価される音量では,その環境より環境騒音ヒベルが10dB程度以上高い環境では聴き取ることができない恐れがあることが想定された。 社会調査では,低騒音車との遭遇体験や接近通報装置の必要性などについてアンケート調査を実施した。調査の原本は日本語で作成し,それを英訳したものをドイツでの調査に使用した。ドイツでは35通のアンケート用紙を配布し,20歳代から50歳代の男女27名から有効な回答を得た。国内では,111通のアンケート用紙を配布し,18歳から80歳代までの男女110名から有効な回答を得た。各設問間の関係をクロス集計等で分析した結果,現在の自動車の走行音について特に不満はなく,静かな走行音では不安を感じる回答者は,低騒音車に接近報知音が必要だと考える傾向があることが示された。一方,自動車の走行音は静かなほうが良いと感じている回答者は,接近報知音は不要だと考える傾向があると示された。
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